「がん」と聞くと、治らない病気、最悪の事態を意識する病気というイメージをお持ちの方も多いのではないかと思います。
このほど、国立がん研究センターから、がんと診断された方の10年後の生存率が58.3%と前回調査に比べて1.1%改善したことが発表されました!
がん10年生存率58.3%に 1.1ポイント上昇
2020年11月19日 14:00
国立がん研究センターは19日、2004~07年にがんと診断された人の10年後の生存率が58.3%で、前回集計した03~06年に比べ1.1ポイント上昇したと発表した。データを取り始めた2000年ごろから、同じ計算式で比較すると少しずつ向上している。
集計に関わった千葉県がんセンター研究所がん予防センターの三上春夫部長は、生存率改善は新しい治療法の登場よりも「標準的な治療が全国的に受けられるようになってきたことが背景にあるのではないか」と話している。
国立がん研究センターが10年生存率を公表するのは6回目。今回はがんの治療を専門とする21施設の約9万4千人の患者情報を対象にした。
部位別で生存率が目立って低かったのは膵臓(すいぞう)がん(6.2%)、肝臓がん(16.1%)、胆のう胆道がん(19.1%)だった。一方、最も高かったのは前立腺がん(98.8%)で、乳がん(86.8%)、甲状腺がん(85.7%)と続いた。
また2010~12年の5年後の生存率は68.6%で、09~11年に比べて0.2ポイント上がった。部位別の傾向は10年生存率とほとんど同じだった。詳しくは全国がんセンター協議会のホームページで確認できる。アドレスはhttp://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/
〔共同〕
今回発表されたプレスリリースはこちらになります。
全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について5年生存率、10年生存率データ更新 グラフデータベースKapWeb更新(2020年11月19日国立研究開発法人国立がん研究センター)
発表されたがん10年生存率を少し詳しく見てみましょう。
がん10年生存率
がん10年生存率の結果は、以下のようになっていて、全部位では58.3%と、前回の57.2%から1.1%改善しています。
相対生存率算出結果の概要 (一部抜粋)
全部位全臨床病期の10年相対生存率(病期不明症例を含む全症例)は58.3%でした(同じデータベースによる5年相対生存率は65.5%)。
注:数値は各部位の病期不明症例を含む全症例の10年相対生存率
注:( )内の数値は、2003年から2006年症例の10年相対生存率
- 全部位58.3%(57.2%)
- 食道31.8%(30.9%)
- 胃66.8%(65.3%)
- 大腸68.7%(67.8%)
- 肝16.1%(15.6%)
- 胆のう・胆管19.1%(18.0%)
- 膵臓6.2%(5.3%)
- 喉頭63.3%(61.9%)
- 肺32.4%(30.9%)
- 乳(女)86.8%(85.9%)
- 子宮頸68.7%(68.8%)
- 子宮体81.6%(81.2%)
- 卵巣48.2%(45.3%)
- 前立腺98.8%(97.8%)
- 腎臓など62.8%(64.0%)
- 膀胱61.1%(62.6%)
- 甲状腺85.7%(84.1%)
このデータを見ると、がんと一言で言っても、その生存率には大きな違いがあることが確認できます。以下、( )内は前回の調査結果です。
10年がん生存率が高いものは、
- 前立腺 98.8%(97.8%)
- 乳(女) 86.8%(85.9%)
- 甲状腺 85.7%(84.1%)
といずれも8割を越えています。
一方、10年がん生存率が低い方は、
- 膵臓 6.2%(5.3%)
- 肝 16.1%(15.6%)
- 胆のう・胆管 19.1%(18.0%)
となっており、いずれも2割以下となっています。
標準治療が重要?
上でご紹介した記事の中で、生存率改善の要因として、千葉県がんセンター研究所がん予防センターの三上春夫部長の以下のようなコメントが紹介されています。
「標準的な治療が全国的に受けられるようになってきたことが背景にあるのではないか」
この標準的な治療とは一体何なのでしょうか?
標準治療とは、以下のようなものです。
科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療
一方、「先進医療」というものもあります。よく民間の医療保険の特約としてあるものです。
言葉のイメージからは、先進医療の方がスゴイ治療のような印象をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、言葉のイメージとは裏腹に、「先進医療」は公的医療保険の対象とすべきかどうか(科学的な根拠に基づいて、効率的で最良の治療かどうか)、評価が必要な(逆に言えば、まだ十分にその有効性が示されていない)療養という意味なのです。
標準治療と先進医療の詳細については、ぜひ次の記事をご覧いただければと思います。
最後に
ということで、がんと診断された方の10年生存率が改善しているというニュースでした。
がんと言うと、どうしても恐ろしい病気というイメージがありますが、
- 部位によってその生存率は大きく異なること
- 公的医療保険の対象となる標準治療とはどのようなものなのか
- 公的医療保険の高額療養費制度など、自己負担がどのくらいになるのか
といったことをきちんと理解しておくことが大切だと考えています。