注)5月22日時点では(案)でしたが、6月3日には(案)が外され、「報告書」として公表されています( 金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について )(2019/6/7 追記)
金融庁が令和元年5月22日の金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第23回)で公表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)が話題になっています。
資料は1,2とありますが、資料1が報告書(案)で丁寧に説明している資料、資料2が参考資料ということで図表などが中心の資料となっています。
資料1 事務局説明資料(「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案))
資料2 参考資料
この記事をご覧の皆さまには、ぜひ資料1(50ページほどの報告書(案))に目を通して頂きたいところです。
が、お忙しい方も多いと思いますので、筆者が気になったポイントをいくつか引用しながら本記事で簡潔にご説明していきたいと思います。
金融知識の必要性
(以下、引用文中の赤字強調はすべて筆者による)
退職金の金額の大きさを踏まえると資産運用に回す金額は多額であると言えることから、こうした投資を行う際には、運用方針や資産運用にあたって必要な金融に関する知識を、事前にある程度は身につけてから臨むことが望ましいと言える。
P.15より
至極当たり前と言えば当たり前のことだと思いますが、退職金としてまとまったお金を受け取った際に、それほど金融、特に運用のことを勉強せずに、金融機関に勧められるまま運用を始めてしまう方も多いようです。
それまでに運用経験を積んでこられた方であれば、適切に判断できるかと思いますが、退職金で投資デビューという場合には、事前にしっかり勉強しておくことが重要です。
ぜひ本サイトの記事をお読み頂き参考にして頂ければと思いますが、運用という意味では以下の記事から読み始めて頂くことをオススメします。
https://shisankeisei.jp/investment-for-building-wealth/
ライフプランシミュレーションの重要性
早い時期から生涯の老後のライフ・マネープランを検討し、老後の資産取崩しなどの具体的なシミュレーションを行っていくことが重要であるといえる。
P.17より
このようにライフスタイルが多様化する中では、個々人のニーズは様々であり、大学卒業、新卒採用、結婚・出産、住宅購入、定年まで一つの会社に勤め上げ、退職後は退職金と年金で収入を賄い、三世帯同居で老後生活を営む、というこれまでの標準的なライフプランというものは多くの者にとって今後はほとんどあてはまらないかもしれない。今後は自らがどのようなライフプランを想定するのか、そのライフプランに伴う収支や資産はどの程度になるのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えていく必要があるといえる。
P.23より
よく、
老後資金は3000万円必要だ!
いや1億円必要だ!
などと数字が飛び交っていますが、収入水準、支出水準、資産規模など、お一人お一人、各ご家庭によって様々です。一律にいくらでしょう、などと言うことはできません。
そこで重要になってくるのが、ライフプランシミュレーションです。
- どんな人生を歩んでいきたいか(ライフプラン)
- それに必要なお金はどのくらいか(マネープラン)
という形で、2ステップでシミュレーションしてみることが大切です。
簡単なワークシートをご提供していますので、よろしければ以下の記事からライフプランシミュレーションをやってみて頂ければと思います。
https://shisankeisei.jp/introduction-self-diy-life-planning/how-to-do-your-life-plan-simulation/
公的年金に頼りすぎない
重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。
P.21より
公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。
P.24より
上記のライフプランシミュレーションとも関連してくる話ですが、自分が公的年金をどのくらい受給できるのか、そしてそれは自分の希望する生活水準を満足させられるのか、具体的な数字で考えていくことが大切です。
具体的な考え方については以下の記事を参考にして頂ければと思います。家族構成や就労形態に応じて5回に分けてご説明しています。
長期・積立・分散投資が多くの人にとって好ましい資産形成方法
長期・積立・分散投資がリスクをコントロールし、一定のリターンをもたらしやすい点で多くの人にとって好ましい資産形成のやり方であると考えられる。
P.22より
スマホやパソコンで常にマーケットを見ながら安くなったら買って、高くなったら売る、という短期的なトレーディングではなく、20~30年といった長期の時間軸でコツコツ資産形成していく積立型のインベストメントをしていくことが多くの方にとって適切な資産形成方法だと思います。
このスタイルに慣れてくると、マーケットの動きに鈍感になり、ハラハラドキドキしたり、一喜一憂したりすることがなくなってくると思います。
また、リスクをおさえるという意味では、投資対象を分散しておくことが重要です。
人生の3つのステージに応じて適切な行動を
現役期
→ 長寿化に対応し、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期
リタイヤ期前後
→ リタイヤ期以降の人生も長期化していることに対応し、金融資産の目減りの防止や計画的な資産の取崩しに向けて行動する時期
高齢期
→ 資産の計画的な取崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期
「【付属文書1】高齢社会における資産の形成・管理での心構え」より
現役期の少額からでも資産形成を始めていくことをオススメします。
ムリのない範囲で、例えば毎月1000円とかでもよいので、投資信託への積立投資を始めてみるのは、資産形成の大事な第一歩です。
まずは、税制優遇のある「つみたてNISA」口座を活用するのがよいでしょう。
具体的な投資信託については、以下の記事を参考にして頂ければと思います。
また、お勤め先での企業型確定拠出年金や、個人型確定拠出年金(iDeCo)などをやっている方は次の記事も参考にして頂ければと思います。
ということで、「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)の内容で筆者の気になったポイントに絞ってご紹介させて頂きました。
お時間許す方は、ぜひ報告書(案)を一読されることをオススメします。