これまで4回にわたって、ご夫婦の老後資金について確認してきましたが、最終回としてシングルの方の老後資金を確認していきます。
では、早速、確認していきます。
前提条件
これまで同様、以下のような条件を前提とします。
前提
- 男性は84歳、女性は89歳まで生きる
- 60歳以降の生活費は月額14.2万円(高齢単身無職世帯(世帯主が60歳以上))
- 収入
- 会社員・公務員の場合:平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8 万円)で 40 年間就業
- 自営業・フリーランス
- その結果、65歳から月額15.6万円の公的年金を受給
女性の場合
まずは女性の場合です。
60歳から89歳までの生活費は、
14.2万円 ✕ 12ヶ月 ✕ 30年 = 5112万円
となります。
厚生年金加入(会社員・公務員)の場合
公的年金収入は65歳から89歳まで、
15.6万円 ✕ 12ヶ月 ✕ 25年 = 4680万円
となります。
よって、差し引き、
生活費 ー 公的年金収入
= 5112万円 ー 4680万円
= 432万円
を老後資金として準備しておくべき、という結論になります。
国民年金加入(自営業・フリーランス)の場合
公的年金収入は65歳から89歳まで、
6.5万円 ✕ 12ヶ月 ✕ 25年 = 1950万円
となります。
よって、差し引き、
生活費 ー 公的年金収入
= 5112万円 ー 1950万円
= 3162万円
を老後資金として準備しておくべき、という結論になります。
男性の場合
次に男性の場合です。
60歳から84歳までの生活費は、
14.2万円 ✕ 12ヶ月 ✕ 25年 = 4260万円
となります。
厚生年金加入(会社員・公務員)の場合
公的年金収入は65歳から84歳まで、
15.6万円 ✕ 12ヶ月 ✕ 20年 = 3744万円
となります。
よって、差し引き、
生活費 ー 公的年金収入
= 4260万円 ー 3744万円
= 516万円
を老後資金として準備しておくべき、という結論になります。
国民年金加入(自営業・フリーランス)の場合
公的年金収入は65歳から84歳まで、
6.5万円 ✕ 12ヶ月 ✕ 20年 = 1560万円
となります。
よって、差し引き、
生活費 ー 公的年金収入
= 5112万円 ー 1560万円
= 3552万円
を老後資金として準備しておくべき、という結論になります。
生活費について
今回、60歳以降の生活費については、月額14.2万円(家計調査:高齢単身無職世帯(世帯主が60歳以上)の平均)として計算してみました。
60歳時点で、1ヶ月14.2万円は低いのではないか、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、二人以上の世帯のうち高齢無職世帯(世帯主が60歳以上)の生活費が、以下のように
- 60~64歳 29.0万円
- 65~69歳 26.4万円
- 70~74歳 24.3万円
- 75歳以上 21.5万円
高齢になるほど下がっていくことを考えると、60歳以降のすべての生活費の平均として考えれば妥当なのかもしれません。
留意点
ご夫婦の場合同様、今回の計算結果を解釈する上で、留意しておくべき事項をまとめておきます。
- 今後、寿命が伸びていく可能性があるが、その点は考慮されていない
- 今回は平均で計算しましたが、老後の生活費は人それぞれ
- 特に、持家で住宅ローン完済済みか、賃貸かで生活費は大きく変わる
- 要介護になった場合は、別途介護費用が必要 【関連記事】「介護」に備える
- 退職金・企業年金を受け取れる方は、その分、自分で準備すべき金額は下がる
まとめ
いかがでしたでしょうか?
男女ともに、会社員・公務員の方の場合、平均的な生活費(月額14.2万円)であれば、準備しておくべき老後資金は400~500万円程度あれば十分という結論でした。
一方、自営業・フリーランスの方の場合は、準備しておくべき老後資金は3000~3500万円程度とかなり大きな金額になりました。
しかし、自営業・フリーランスの方は、定年がありませんので、60代でも、70代でも、知力・体力が続く限りは働き続けることが可能です。70歳まで働き、年金の受取を繰下げて70歳にすると、受取額を42%アップさせることも可能です。
これまで5回にわたり、「老後資金は3000万円?」ということで、様々なパターンでの老後資金を計算してきました。
それでも、基本的には単純な事例で計算しており、現実には、公務員から自営業になり、その後会社員へ、などいろいろな働き方が考えられます。「3000万円だ!」「1億円だ!」などとキャッチーな数字を鵜呑みにせず、必ず、自分ごととしてきちんと確認していくことが大切です。
ご自身のライフスタイル、ライフプランをイメージしながら、計画的に老後資金を準備していくようにしましょう。