資産形成ハンドブックでは、無料・登録不要で使えるお金のツールを21本公開しています(2026年8月時点)。この記事ではそのうちの1本、「年間生活費チェッカー」をご紹介します。
「昨年1年間で、いくら使いましたか?」
そう聞かれて、すぐに答えられる方はそう多くないのではないでしょうか。家計簿をつけていない、という方も多いのではないかと思います。
ただ、この問いに答えるために、レシートを1年分集める必要はありません。基本的に、入ってきたお金から、残ったお金を引くだけでよいからです。このツールは、その引き算をお手元の書類だけで行うためのものです。

「使ったお金」は、2つの道から確かめられます
家計の支出をつかむ方法には、大きく2つの道があります。
ひとつは、上から降りてくる道です。収入と預金残高の変化から逆算します。使いみちまではわかりませんが、金額そのものは正確につかめます。
もうひとつは、下から積み上げる道です。費目ごとに書き出して合計します。使いみちはわかりますが、書き出せなかった支出は抜け落ちます。
どちらも単独では不十分で、2つを突き合わせてはじめて全体像が見えてきます。このツールが「①いくら使った?」「②何に使った?」「③見くらべる」の3段構えなのは、そのためです。考え方は資産形成ハンドブックのP.36・P.40・P.49〜51に沿っています。
STEP 1:書類から逆算します
給与所得者の方の場合、まず用意するのは、源泉徴収票と、住民税決定通知書もしくは給与明細、そして預金残高2つ(前年12月末と、その年の12月末)です。
源泉徴収票から書き写すのは3か所だけです。①支払金額、②社会保険料等の金額、③源泉徴収税額。さらに住民税決定通知書もしくは給与明細から住民税額を確認できれば、手取り収入が出ます。そして、預金残高の増減と、NISA・iDeCoなど預金以外に積み立てた額を入れれば、「1年間で使ったお金」(年間生活費)が計算されます。

たとえば支払金額400万円・社会保険料60万円・所得税6.5万円・住民税17.5万円という前提なら、手取りは316万円です。預金が200万円から230万円に増え、積立が30万円だったとすると、残ったお金は60万円。差し引きで、使ったお金は256万円と出ます。

ここで大切なのが、2つの預金残高で数える口座の範囲をそろえることです。給与口座だけを数えてしまうと、そこから貯蓄用口座へ移したお金が「使ったお金」に化けてしまいます。月3万円の振替なら、年36万円ぶん支出が多く出ることになります。
STEP 2:費目ごとに書き出します
STEP 2 は、資産形成ハンドブックと同じ6分類(基本生活費・特別生活費・住居費・保険料・教育費・その他)で書き出していきます。
ただし入力欄の並びは、分類順ではなく思い出しやすい順にしてあります。住居費や保険料のように調べればすぐわかるものが先で、食費のように「だいたい」でしか答えられないものが後ろです。正確でなくて構いません。わかるところから、下にいくほどラフで大丈夫です。

なお、貯蓄や投資にまわしたお金と、天引きの税金・社会保険料は、ここには入れません。どちらも STEP 1 ですでに差し引いているため、二重に数えることになってしまうからです。
個人事業主の方は、確定申告書から
働き方は、ご本人・配偶者それぞれに選べます。個人事業主を選ぶと、入力元が確定申告書 第一表と青色申告決算書に切り替わります。
事業所得は、そのままでは「使えるお金」ではありません。そこで、帳簿の上でしか引かれていない青色申告特別控除と減価償却費を足し戻し、経費にならないのに現金が出ていく設備投資を引くことで、「事業から家計に回せた現金」にそろえます。資産形成ハンドブック P.40 と同じ考え方です。

このモードでは、預金残高に事業用の口座を必ず含めてください。含めないと、事業に残した利益がまるごと「使ったお金」に化けてしまいます。
このツールならではの、2つの気づき
① 住民税は、源泉徴収票に載っていません
所得税は「源泉徴収税額」として載っているのに、住民税はどこにも書かれていません。探しても見つかりません。
住民税は前年の所得に対して翌年払う後払いの税金で、給与からは6月〜翌年5月の12回に分けて引かれます。金額が切り替わるのも6月です。ここを知らないまま逆算すると、年間支出が数十万円ずれることになります。
そのためこのツールでは、住民税決定通知書の「特別徴収税額(年税額)」を書き写す欄を最初のところに置いています。通知書が手元にない方には、給与明細の1月・6月・7月の3か月分から年額を求める補助入力を用意しました。


② 書き出した額と、逆算した額は一致しません
STEP 3 では、ふたつの数字を並べます。先ほどの例では、逆算した256万円に対して、書き出した合計は216万円。差は40万円、月にして3.3万円です。
この差が、使ったはずなのに書き出せていない支出です。家計簿アプリは記録した分しか映しませんが、逆算のほうは記録していない支出も含めて捕まえます。2つの道を両方走らせる意味は、ここにあります。
とはいえ、この差をゼロに近づける必要はありません。差額を基本生活費か特別生活費に上乗せした表が出るので、そのままライフプランシミュレーションの前提としてお使いいただけます。

この数字に含まれないもの
本ツールは概算の試算であり、税額や社会保険料そのものの判定は行っていません。とくに個人事業主モードは、事業所得(発生主義)と実際の現金の動きにずれがあるため、会社員モードより誤差が大きくなります。
また、「手取り」の考え方が給与手取り計算シミュレーターとは異なります。あちらは給与から引かれたお金だけを差し引くのに対し、こちらは自分で納めた国民年金保険料なども差し引いているためです。
なお入力内容はURLに自動保存され、同じURLを開けば続きから再開できます。URLに金額が含まれる点にはご注意ください。
まとめ
- 1年間で使ったお金は、「入ってきたお金 − 残ったお金」で逆算できます。源泉徴収票から書き写すのは3か所だけです
- 住民税は源泉徴収票に載っていません。ここが逆算のいちばんの落とし穴です
- 逆算した額と書き出した額の差が、把握できていない支出です。手間をかけてまで、ゼロにする必要はありません
家計の把握は、それ自体が目的ではありません。いくら使っているかがわかってはじめて、そのお金が自分にとって有意義に使えているかを考えられるようになるのだと思います。
皆様の資産形成の一助となれば幸いです。
※本ツールによる計算結果は、入力された条件等に基づく概算です。個別の判断については、必要に応じて専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において行ってください。