昨日の記事で取り上げたとおり、今回骨折で手術をすることになったわけですが、民間の医療保険(入院保険)には加入しておくべきだったのでしょうか。
今回はそれを確認してみます。
病気やケガに備える民間の医療保険(入院保険)とは?
日本は国民皆保険の国であり、誰もが公的医療保険に加入しています(公助)。
そして、お勤め先によっては職場の福利厚生(共助)として、健康保険組合の付加給付が充実している場合もあります。
そういった公的医療保険(公助)や職場の福利厚生(共助)を確認した上で、それでも給付が足りないのではないか、不安である、といった場合に、加入する生命保険の1つが民間の生命保険会社や共済などが提供している医療保険(入院保険)です。
具体的には次のような商品があります(以下の商品はあくまで事例として取り上げており、特定の商品を推奨しているわけではありません)。
オリックス生命保険 医療保険 新CUREキュア
http://www.orixlife.co.jp/medical/n_cure/
ソニー生命保険 総合医療保険(無配当)
http://www.sonylife.co.jp/examine/lineup/list/medical/
ライフネット生命保険 終身医療保険 新じぶんへの保険
http://www.lifenet-seimei.co.jp/product/medical/
(2018年4月9日時点)
主な保障は「入院給付金」と「手術給付金」
各生命保険会社によって保険の内容は少しずつ異なるようですが、基本的には、病気やケガで入院した場合に給付される「入院給付金」と、手術を受けた場合に給付される「手術給付金」が主な保障内容となっています。
入院給付金
これは、入院日数に応じて「1日あたり5000円」などと金額を設定して、給付されるものです。
ただし、入院期間が6日以上の場合に6日目からのみ支給(当初5日間は支給されない)や、1回の入院での給付金額を最長で60日や120日などと、制限が設けられているのが普通です。
手術給付金
こちらは、入院給付金の設定額に対して10倍とか20倍などと、入院した場合にあらかじめ決められた金額が給付されるものです。
例えば、入院給付金が1日あたり5000円、給付倍率が10倍の場合は、5万円が支給されることになります。
入院給付金、手術給付金ともに、実際にかかった費用ではなく、あらかじめ決めた金額が支払われることに注意しましょう。
新社会人の時から医療保険に加入していたら?
今回、人生で初めて骨折し、入院&手術を経験したわけですが、次のような設定で民間の医療保険に加入しておくべきだったかを考えてみます。
【前提】
22歳で社会人になり、終身医療保険に加入
42歳で骨折し入院&手術(入院は3日間)
以下は、あるネット生命保険会社の終身医療保険の見積もり保険料です。
契約商品:終身医療保険
入院給付金:1日あたり5000円。5日以内の入院に対しては一律5日分を支給
手術給付金:1回あたり5万円(入院給付金の10倍)
支払限度日数:60日(1回の入院の上限日数)
保険料払込期間:終身(一生涯)
保険期間:終身(一生涯)
保険料:1165円(月額)
契約時年齢/性別:22歳(男性)
この契約を22歳の時にしていたとしましょう。
(なお、この保険料は最新のものを利用していますが、おそらく20年前は保険料が今よりもずっと高かったはずです。ここでは仮に、現在提供されている保険商品が20年前においても利用できたと仮定しています)
すると、42歳で骨折をするまでに払い込んだ保険料総額は、
1165円 ✕ 12ヶ月 ✕ 20年 = 279,600円
となります。
そして、今回のケガによる入院&手術に対して、この医療保険からの給付金は、
- 入院給付金が25,000円 (入院日数は3日だが、最低でも5日分支給される契約のため)
- 手術給付金が50,000円
となりますので、合計75,000円受け取ることができます。
約28万円払い込んで、そのうち75,000円を受け取ることになるわけです。
これを「どう判断するか?」ということになるわけですが、まだ42歳ですし、保険料支払いのみならず保険期間も一生に渡って続くわけですから、現時点では、損したとも得したとも判断できません。
もちろん人によっては「入っておいてよかった」と思われる方もいらっしゃるでしょうし、「これなら入っておかなくてもよかったな」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
保険料相当額を運用していたら?
ここで少し視点を変えてみます。
上の医療保険(入院保険)に加入せず、月額1165円の保険料相当額を、自分で積立預金もしくは積立投資していたら、いくらになっていたかを考えてみます。
結果は次のようになります。
運用利回り | 運用商品のイメージ | 42歳時の評価額 | 75,000円を 差し引くと、 残りは? |
---|---|---|---|
0% | 現金 | 279,600円 | 204,600円 |
0.1% | 定期預金 | 282,426円 | 207,426円 |
2% | バランス型の投資信託 | 344,010円 | 269,010円 |
5% | 株式100%の投資信託 | 480,849円 | 405,849円 |
左から運用利回り、具体的な運用商品のイメージ、42歳時点での評価額、保険契約をしていたら支払われる75,000円を差し引いた場合の残額、となっています。
この結果は、あくまでこのような利回りで運用できていたら、という前提での話であることにはご注意ください。
ただ、運用期間は20年間とかなり長期になっていますし、それほど非現実的な数字ではないと思います。
この医療保険に入らず自分で運用していた場合、医療費を支払うために保険に入っていたら支払われたはずの75,000円を積立金額から引き出すのであれば、その後は残された金額をもとに運用を続けることになります。
正解はありません
いかがでしたでしょうか。
YESかNOか、結論を期待していた方には申し訳ありませんが、現時点では、医療保険に加入しておくべきだったかどうかについて判断できない、というのが結論になります。
残りの人生で、一度も入院することなく、無事過ごすことができたら、保険料は支払うのみで、1円も受け取らずに人生が終わることになります(ちなみに、82歳まで生きるとしたら、さらに40年間毎月1165円を払い込んだ場合、さらに559,200円支払うことになります)。
一方、入院グセがついてしまい?、その後は頻繁に入院するという人生になったとしたら、払い込んだ保険料総額を上回る給付金を受け取れることになります。
ただ、入院給付金や手術給付金は、ものすごく多額のお金をもらえるというものではなく(今回の例だと75,000円ですし、仮に上限日数の60日入院したとしても入院給付金は30万円)、そのくらいであれば、自分で積立をして資産形成してさえいれば何とかなる金額なのではないかと、個人的には考えています。
「保険に入ることで何となく安心感が得られるというのであれば加入しておく」という選択肢もアリでしょうし、
「そのくらいの金額であれば積立をしている自分の手元資金からまかなうぞ」という選択肢もアリだと思います。
最後はその人の価値観だと思いますし、最終的に経済的な意味合いで入っていて得したか損したかというのは死ぬまでわかりません。
大事なことは、誰もが公的医療保険に加入しており、高額療養費制度などの給付がかなりしっかりしているということです。
それをきちんと理解した上で、民間の生命保険への加入を検討していきましょう。