2回にわたって、平均入院日数や、入院した場合の自己負担額などを確認してきました。
みんなどのくらい入院してるの?入院する確率は1%!平均入院日数は31.9日!~厚生労働省「患者調査」(平成26年)より~
入院リスクへの備えはどれほど必要?平均自己負担費用は22.1万円!医療保険加入率は72.1%!~生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(平成28年度)~
具体的な数字を確認することで、ホッとされた方もいらっしゃるかと思いますが、中には、
「そうは言っても、がんになったら?糖尿病になったら?くも膜下出血になったら?一体いくらかかるの?」
と不安をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回はさらに深掘りして、厚生労働省「医療給付実態調査」(平成27年度)から具体的な傷病ごとの平均入院日数と診療費を確認してみます。
傷病別の平均入院日数と診療費サマリー
早速ですが、次の表が傷病別の平均入院日数と診療費のサマリーになっています。
(小さくて見づらくなってしまい恐縮ですが、クリックして拡大して頂ければと)
まずはこちらの表の見方をご説明致します。
左側の傷病名のところは、「1 感染症および寄生虫症」から「22 特殊目的用コード」まで、傷病が分類されています。
そして、右側では公的医療保険の制度名ごとに、大きく「制度・計」、「協会(一般)・計」、「後期高齢者医療・計」と分かれています。
公的医療保険の制度は、基本的には誰もが「協会けんぽ(協会(一般))」「組合健保」「共済組合」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」のいずれかに加入しているのですが、その中から、上の表では、現役世代の方が加入されている「協会(一般)・計」と、75歳以上の後期高齢者の方が加入されている「後期高齢者医療・計」のデータを取り上げました。
年齢によって入院日数や診療費に違いが見えるのではないかと思ったからです。
そして、「制度・計」は、「協会けんぽ(協会(一般))」「組合健保」「共済組合」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の公的医療保険全体でのデータを示しています。
それぞれの制度毎に平均入院日数と診療費を示していますが、これは各傷病にかかった場合に、平均入院日数が何日で、診療費が合計いくらだったかというものです。
この診療費は、かかった診療費総額になりますので、実際には自己負担割合が3割の方であれば、この数字の3割が自己負担金額になります。例えば、「2 新生物」の「協会(一般)・計」の診療費は、658,139円となっていますが、自己負担分としては3割の197,441円となります。
さらに、この約20万円という数字に対して、高額療養費制度が適用されますので、実際の診療費の自己負担はさらに小さくなる方が多いのではないでしょうか。
ということで、表の見方がわかったところで、詳細を見ていきます。
まずは生命保険などでもよく注目される三大疾病です。
三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)
いわゆる三大疾病は、「がん(悪性新生物)」「急性心筋梗塞」「脳卒中」です。
データと必ずしもきれいに一致していなかったようですので、
- 「がん(悪性新生物)」は「新生物」のデータ
- 「急性心筋梗塞」は、それが含まれる「虚血性心疾患」のデータ
- 「脳卒中」は、「くも膜下出血」「脳内出血」「脳梗塞」のデータ
を抽出して作成した表が次のものです。
三大疾病の入院日数は1週間~1ヶ月、診療費としては60万円~120万円に概ねおさまっているようです。
次からは、傷病ごとに、順番に見ていきます。
感染症及び寄生虫症
腸管感染症、結核、ウイルス肝炎などが含まれています。
新生物
新生物ということで、いわゆるガンです。
胃や結腸などの悪性新生物、悪性リンパ腫、白血病などが含まれています。
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害、内分泌,栄養及び代謝疾患、精神及び行動の障害
3つの分類まとめて示していますが、血液の病気、甲状腺障害や糖尿病、そして統合失調症などの精神及び行動の障害が含まれています。
神経系の疾患、眼及び付属器の疾患
パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経系疾患と、結膜炎、白内障といった眼の疾患についてです。
耳及び乳様突起の疾患、循環器系の疾患
中耳炎やメニエール病、さらには循環器系のくも膜下出血、脳梗塞などが含まれています。
呼吸器系の疾患
肺炎や慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの呼吸器系の疾患です。
消化器系の疾患
胃潰瘍や肝硬変など消化器系の疾患です。
皮膚及び皮下組織の疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患
皮膚炎や、関節症、椎間板障害などです。
腎尿路生殖器系の疾患、妊娠,分娩及び産じょく、周産期に発生した病態
腎不全や尿路結石症、妊娠高血圧症候群、そして妊娠及び胎児発育に関連する障害などです。
先天奇形,変形及び染色体異常、症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの、損傷, 中毒及びその他の外因の影響、特殊目的用コード
最後に、心臓の先天奇形や骨折などの損傷です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
平均自己負担額が22.1万円と言われてもあまりピンと来なかったかもしれませんが、このように傷病別の具体的な診療費を確認すると、例えば、「診療費が50万円だとその3割で15万円。それに差額ベッド代、衣料費、交通費などで20万円ちょっと」とより具体的にイメージできるのではないでしょうか(実際には、さらに高額療養費制度が適用されます)。
このデータは平均ですから、もちろん平均を上回る場合もあれば、下回る場合もあります。ただ、このデータを見る限りは、診療費としては100万円未満のケースが多そうですね。
資産形成がある程度進み、金融資産ができてきたら、「民間の医療保険は卒業する」という選択肢も十分あるのではないでしょうか。
金融資産であれば、医療(入院、手術)に限定されず、介護や老後などのリスク対策にもなりますし、必要な場合は普段の生活に使うことも可能ですから自由度が高くなります。