本日の日経新聞1面トップで、住宅ローンの借入で、変動金利を選ぶ人が過去最高の56%になっているという記事がありました。
住宅ローン、変動型が過去最高56% 低金利続く見方
2018/7/3 20:00日本経済新聞 電子版住宅ローンを変動型金利で借りる人が急速に増えている。2017年度下期に借り入れをした人の56.5%を占め、前年同期に比べて9ポイント増え、過去最高になった。超低金利が長期化するという観測に加え、マイナス金利政策の導入後に銀行間で過熱した固定型での金利競争が一服した面もある。日銀が将来利上げする際には返済額が増える可能性を抱える世帯が増える。
変動型の適用金利は主に短期金利に連動して半年ごとに変わ…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32564650T00C18A7MM8000/
筆者も住宅ローンはほぼ変動金利(正確には3年固定。その時点で変動より金利が低かったから)で借りていますが、今のご時世、長期で高い金利で固定して借りるよりも、変動金利の方がおトクなのではないかと考えています。
ただし、あくまで変動は変動、将来の金利リスク上昇の可能性もあるため、
実際には変動金利で借りるものの、家計的には固定金利で借りたつもりになる
のがよいと考えています。
この「つもり」というのが今日のポイントです。
では、具体的にご説明していきます。
住宅ローン3000万円を返済期間30年で借りた場合
住宅ローン3000万円を30年で借りたと仮定します。
固定金利の場合
まず、固定金利で借りたとしましょう。
フラット35などの実勢金利を考えると、30年固定だと1.5%程度かと思いますので、ここでは1.5%で借りたとします。
すると、月々の返済額は
103,536円
となります。
この場合、今後30年間で短期プライムレートがどうなろうと、10年国債がどうなろうと、借りた金利は1.5%、毎月の返済額は103,536円で変化しません。
変動金利の場合
次に変動金利で借りたとします。
現在の変動金利は、0.5%程度なので、ここでは0.5%で借りたと仮定します。
すると、月々の返済額は
89,757円
となります。
変動金利の場合、今後30年間で、基本的に短期プライムレートが上昇してくると、それに連動して住宅ローンの金利も上昇することになります。
ただ、変動金利には「5年ルール」「125%ルール」などと呼ばれるルールがあり、金利が急激に上昇しても返済額は急激には増加しないようになっています。以下、簡単にご説明します。
5年ルールというのは、「借入後金利が上昇したとしても、返済額は5年間は変化しない」というものです。つまり、今回の例でいうと、当初5年間は89,757円という毎月の返済額が変更されることはありません。
また、125%ルールというのは、「5年ルールの適用が外れる5年1ヶ月目の返済額は、その直前まで返済していた金額の125%を超えることはない」というものです。つまり、今回の例ですと当初5年間の返済額は89,757円なので、
89,757円 ✕ 125% = 112,196円
となり、毎月の返済額が急に15万円とか20万円になることはなく、どんなに上昇しても112,196円になるということです。
「30年の固定金利で借りたつもりになる」戦略
話が変動金利の仕組みのご説明になってしまいましたが、ここで「30年の固定金利で借りたつもりになる」戦略をご説明します。
上記の通り、実際には変動金利で借りるのがよいと思っているのですが、この借りたつもり戦略は
30年の固定金利で借りたつもりになって、30年固定で借りた場合の返済額と、実際に変動金利で借りた場合の返済額の差額を、毎月積み立てておく
というものです。
つまり、毎月
30年固定で借りた場合の返済額 ー 変動金利で借りた場合の返済額
= 103,536円 ー 89,757円
= 13,779円
を積み立てておくのです。
変動金利で借りたとしても、5年ルールがありますから、当初5年間で返済額が変動することはありません。
そうすると、5年間で、
13,779円 ✕ 12ヶ月 ✕ 5年 = 826,740円
ほど積み立てることができます。
変動金利で借りた場合、ちょうど5年後(60ヶ月後)時点での借入残高は
25,307,151円
となっています。
そこで、それまで積み立てておいた826,740円を繰上返済にまわすと、繰上返済後の借入残高は、
25,307,151円 ー 826,740円 = 24,480,411円
となります。
ここで、急に金利が上昇して、1.5%になったとします(現実的ではない仮定ですが、シミュレーションということでご理解ください)。
すると、残りの返済期間25年間、借入残高24,480,411円、変動金利1.5%で、返済していくことになるわけですが、その場合の月々の返済額は、
97,906円
となります。
当初から30年固定1.5%で借りていた場合の返済額は、103,536円でしたから、それよりも返済額は小さくなります。
これはなぜかと言いますと、当初から30年固定1.5%で借りていた場合、5年経過時点の借入残高は25,888,140円となっており、変動で借りていた場合(積立額を繰上返済後)の残高24,480,411円と比べて、まだ1,407,729円も残高が多い状況だからです。
言い換えますと、変動0.5%で借りていると、30年固定1.5%の場合より、5年間で約140万円も元金返済が進んでいる状況になるわけです(途中で変動金利が変わらなかった場合)。
さらに少し視点を変えて、当初変動で借りて5年経過後の時点、つまり残りの返済期間25年間、借入残高24,480,411円となった場合、適用される変動金利が何パーセントになると、月々の返済額は当初から30年固定で借りた場合の103,536円になるか確認しておきます。
これを計算すると、1.98%という結果になります。
つまり、変動金利0.5%で借りて、当初5年間は金利の変化がなかった場合、5年1ヶ月目で金利が1.98%以上に上昇していない限り、それ以降の返済額は当初から30年固定で借りていた場合(103,536円)より低くなるわけです。
まとめ
ちょっと長くなってしまいましたので、まとめます。
住宅ローンを実際には変動金利で借りるものの、30年固定の金利(もしくは自分で2%などと高めに設定した金利)で借りた場合の返済額を計算して、変動で借りて実際に返済していく返済額との差額分を月々積み立てておき、5年おきくらいで、その都度繰上返済をしていく、というのが賢い借り方・返し方なのではないか、ということです。
伝わりましたでしょうか。
注意
最後に1点注意です。
変動金利の住宅ローンであっても、一部の金融機関では、5年ルール、125%ルールが適用されない場合もありますので、必ずご自身の契約内容を確認するようにしましょう。