本日も引き続き、世界の株式に幅広く投資する際に、日本、先進国、新興国の株式をどのような割合で保有するのがよいか、について考えていきます。
昨日までの記事はこちらですので、まずはこちらをお読み頂ければと思います。
世界に株式会社が2つしかなかったら?
できるだけシンプルで極端な例として、「世界に株式会社が2つ(株式会社Aと株式会社B)しかなかったら」と仮定し、以下の3つのシナリオについて
- シナリオ1)世界経済がゼロ成長で、2社の業績が2極化した場合
- シナリオ2)世界経済がプラス成長で、2社の業績に差が生まれた場合
- シナリオ3)世界経済がゼロ成長で、2社の業績が2極化した後、平均回帰した場合
以下の2つのどちらのポートフォリオ(アセット・アロケーション)がよいかを確認してきました。
- 時価総額ポートフォリオ(保有株数固定ポートフォリオ)
- 等金額ポートフォリオ(保有割合固定ポートフォリオ)
シナリオ1、シナリオ2のいずれの場合でも、時価総額ポートフォリオの方がパフォーマンスはよいことがわかりました。
一方、シナリオ3のような平均回帰的な場合には、等金額ポートフォリオの方がよいものの、それを実現するためには、適切なタイミングでのリバランスが必要であり、それにはコストも発生することを確認しました。
世界をざっくり先進国と新興国に分けてみる
ここで、株式会社A、株式会社Bが、それぞれ先進国株式インデックスの構成銘柄全体、新興国株式インデックスの構成銘柄全体、だっとします(なお、ここでは日本は先進国に含めて考えます)。
つまり、MSCIの指数で考えるなら、
株式会社A(先進国)= MSCI World Index構成銘柄(1649銘柄:2018/3/30)
株式会社B(新興国) = MSCI Emerging Markets Index構成銘柄(846銘柄:2018/3/30)
となります。
そして、世界全体がMSCI ACWIとなります。
(厳密には、ここで対象となる47ヶ国以外の国もありますが、この47ヶ国のGDP合計は、世界全体のGDPの約9割となっているので、ここではこの47ヶ国を世界全体とみなすことにします)
MSCI各指数(ACWI、World Index、Emerging Markets Index)とそれぞれの構成国をまとめると以下のようになります。
このように考えると、先進国株式、新興国株式のポートフォリオ(アセット・アロケーション)を考える時には、
世界経済(先進国、新興国のそれぞれ)が今後どのように成長していくか
が重要になってきそうですね。
そこで、今後のGDPの長期予測を確認してみます。
2050年の世界の国別GDP
資産形成は、長期的に行っていくものですから、来年、再来年といった短期的な予測ではなく、20年、30年といった長期的な世界の国別GDP予測を確認していきます。
2050年のGDP予測はいろいろな調査機関が発表していますが、ここでは2015年にPwCが発表した2050年予測を参考にしていきます。
2050年の世界 世界の経済力のシフトは続くのか?(PwC日本語レポート)
このレポートが発表された2015年の前年である2014年をスタートとして、2030年、2050年の各時点における各国のGDPランキングを予想しています。
日本は緑色の四角で囲ってみましたが、2014年、2030年ともに4位を維持しているものの、2050年では7位と後退することが予測されています。
また、2050年のGDPでは、米国こそ3位に踏みとどまっているものの、その他の先進国は、日本とドイツのみがトップ10に入っているものの、全体的に存在感が低下している様子がわかると思います。
一方、2050年で赤色の四角で囲ったのが新興国(MSCIの分類)ですが、トップ10でも、1位の中国、2位のインドのみならず、インドネシア、ブラジル、メキシコ、ロシアと多くの国が入っています。さらに20位まで見ると、トルコ、パキスタン、エジプト、韓国、フィリピンと5つの国が入っています。
2014年と比べて、2050年の世界経済の状況は様変わりしていることが予測されているのです。
現在新興国に分類されている国が、これだけ世界で存在感を示すようになると、2050年時点ではもはや新興国ではないかもしれません。
ちなみに、1960年から2016年までの日本、アメリカ、中国、インドの実績GDPは次のようになっています。
未来を予測するのは難しいですが、過去の実績として日本のGDPは1995年あたりからほぼ横ばいになっているのに対して、アメリカ、中国、インドは成長を続けていることは認識しておく必要があるのではないでしょうか。
先進国株式、新興国株式のアセット・アロケーションはどうすべき?
今回は、たまたまPwCの予測を取り上げましたが、調査機関によって、その予測は異なりますし、どの予測が正しい(いずれも間違っている?)ということは、実際にその時点になってみないとわかりません。
基本的に、未来は誰も正確に予測できませんし、ましてや資産形成を行う一個人としてはそんな予測がどうなっているかなどを調べたりする時間はないと思います(あったとしても、もっと自分の楽しいことに時間を使ったほうがより幸せな人生になるのではないでしょうか)。
世界経済が今後どうなるか正確なことはわからないけど、長期的には先進国のGDPよりも、新興国のGDPの方がより成長していきそうですね。
イメージ的には、シナリオ2のような感じ(グラフは株価ですが、株式会社Aが新興国のGDP、株式会社Bが先進国のGDPといったイメージ)が現実的なのかもしれません。
ただ、オススメしたいのは、何かのシナリオを予測してそれに基づいてアセット・アロケーションを考えるのではなく、どんなシナリオになったとしてもほどほどのパフォーマンスになるアセット・アロケーションです。
今後、先進国と新興国のそれぞれがどのように成長するかはわからないわけですが、それぞれの国に属する企業の株式を、時価総額に応じて保有し続けていれば、先進国が成長する局面では先進国株式のパフォーマンスがよくなるでしょうし、逆に新興国が成長する局面では新興国株式のパフォーマンスがよくなるでしょう。
そして、時価総額で保有し続けるのであれば、特にリバランスといった作業も必要ありません。
つまり、時価総額ベースで保有し続けていれば、片方がダメになったらもう片方が上がってきますし(モグラたたき的なイメージ?)、両方良ければ両方成長していきますし、どんなシナリオになったとしても、ほどほどのパフォーマンスになるはずです。
一方、等金額ポートフォリオの場合、シナリオ1のようになってしまったら、かなり悲惨なことになります。片方が一方的に沈んでいくゆくような場合、等金額を維持し続けようとしてしまうと、下がり続けるものに資金を割り当て続けてしまうことになるからです。
このような理由から、手間がかからず、どんなシナリオになったとしてもほどほどのパフォーマンスになる時価総額ベースでのアセット・アロケーションを資産形成ハンドブックではオススメします。
現在の時価総額比率(先進国:新興国=87.8%:12.2% ~ ざっくり9:1?)で、投資信託を購入してしまえば、その後はほったらかしで、自然に時価総額の変動に沿った動きをしていくことになります。
これまでできるだけシンプルに考えるため、(日本を含む)先進国、新興国として考えてきましたが、日本、先進国、新興国と3つに分けるのであれば、同様に、時価総額比率、
日本:日本を除く先進国:新興国 = 8 : 79.8 : 12.2 ~ 8 : 80 : 12 ~ 1 : 8 : 1
で保有し続ければよいことになります。
本日で、「世界の株式に幅広く投資するなら時価総額ベースがオススメな理由」の主なところは終了なのですが、もう一日、細かな補足等させて頂ければと思います。
ということで、さらに明日に続きます。