会社員の方で、従業員持株会に加入されている方も多いかと思います。
しかし、資産形成という観点からは、自分の収入である給与に加えて、資産の部分についても同じリスクを取りに行くことになるため、積極的にはオススメできないと考えています。
従業員持株会加入者1人当たりの平均株式保有金額は?
従業員持株会に加入されている方は、どのくらいの金額を持株会で保有されているのでしょうか。
従業員持株会状況調査結果(東京証券取引所)の最新の結果である2016年度の数字を確認すると、従業員持株会加入者1人当たりの平均株式保有金額は200.1万円となっています。
新卒で入社して毎月1万円を持株会で積み立てるとすると、16年8ヶ月で拠出した累計金額が200万円になります。
ちなみに、積立期間中の運用利回り(リターン)が
- 3%であれば約13年6ヶ月
- 5%であれば約12年2ヶ月
で、200万円ほどの金額になります。
つまり、大学卒業して22~23歳くらいで入社されたと仮定すると、30代半ばから40歳くらいで、平均保有金額の200万円くらいになる計算です。
ちなみに、同調査結果によると、会社が従業員の積立金額にあわせて拠出する奨励金は平均で8%程度、持株会の加入割合は約4割とのことです。
従業員持株会のリスク
会社が従業員の資産形成を支援しつつ、自社の安定的な株主になってもらうという従業員持株会ですが、従業員であるみなさんの資産形成という観点からは、積極的にはオススメできません。
というのも、みなさんの
- 主たる収入である給与・賞与はその会社から払われており、
- 受け取った自由に使えるお金の一部を、その会社の株式購入にあてると、資産の一部がその会社のリスクにさらされる
ことになるからです。
会社に勤める限り、その会社の業績によって、給与・賞与が上がったり、下がったり、最悪の場合は職を失ったり、というリスクを取ることになるわけです。
それに加えて、資産の一部を従業員持株会として働いている会社の株式を持つと、最悪の場合、職を失った上に資産まで失ってしまう、ということも起こりえます。
30代半ばから40歳くらいの方にとっての200万円というと、それなりの金額なのではないでしょうか。
勤労者世帯の貯蓄残高は、世帯主が30代で670万円、40代で1026万円というデータがあります。
暮らしと金融なんでもデータ 2 金融資産と負債>2-9(知るぽると 金融広報中央委員会)
30代後半ということで、700~800万円程度の貯蓄があったとして、そのうち200万円くらいを1社の株式で保有するというのは、かなりリスクが集中している状態と考えられるのではないでしょうか。
個別株のリスクについては次の記事で触れていますので、ご覧頂ければと思います。
「卵は一つのカゴに盛るな」
昔から言われている資産運用の格言に、「卵は一つのカゴに盛るな」というのがありますが、資産運用のみならず、広い意味で、職業や資産の両方にわたってもリスクを分散しておくことが重要です。
卵は一つのカゴに盛るな(たまごはひとつのかごにもるな)
分類:相場・格言・由来
株式相場の世界では、先人が、その経験を基にして、さまざまな格言を残している。卵は一つのカゴに盛るなも、そのうちの一つである。卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合には、全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としカゴの卵が割れて駄目になったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということ。
特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいという教え(=銘柄分散投資)。
野村證券 証券用語解説集より引用
以下の記事も参考になります。
マンガでわかる相場格言 投資のお作法(トウシル 楽天証券) > 卵は一つの籠(かご)に盛るな
最後に
従業員持株会は奨励金も付く場合が多いので、手数料を払うどころから、会社から追加の資金をもらいながら資産形成できる制度ではあります。
もちろんイケイケドンドン、急成長中の会社で業績もよく、給与や賞与も上がり続け、株価も右肩上がり、、、ということであれば、そこにリスクを集中させるのが資産形成も速い可能性はあります。
しかし、ご自分が取っているリスクをきちんと認識しておきましょう。
「こんなはずでは、、、」という事態になっては手遅れかもしれません。
リスクは分散しながら資産形成していくのが、安定度や確実性の面でオススメです。
ちなみに、筆者は会社員時代、ある時期までは従業員持株会に入っていましたが、ある程度の金額になったら一部を売却してリスクを一定までに抑えるようにしていました。
また、ある時期からは積み立てそのものをやめておりました。