初めて投資信託を購入しようとされる方は、投資信託について少し調べていくと、投資信託にはアクティブファンドとインデックスファンドという2つの種類があることをご理解されるのではないかと思います。
では、アクティブファンドとインデックスファンドではどちらがいいのでしょうか?
資産形成ハンドブックでは、フツーの人がフツーに資産形成するためには、基本的にインデックスファンドをおすすめしていますが、その理由についてご説明してみたいと思います。
まずは、インデックスファンド、アクティブファンドそれぞれの定義を確認しておきましょう。
インデックスファンドとは?
簡単にインデックスファンドを説明すると、
日経平均株価やNYダウなどのような特定の指標(インデックス)をベンチマークと定め、それに連動するように運用されるファンド
ということになります。
主な特徴としては、以下の2点があります。
- 手軽に分散投資が可能
- 運用コストが低い
例えば、日経平均株価というインデックスに連動するように運用される投資信託の場合、それを1本買うと、自動的に225銘柄に分散投資できることになります。
自分で現物株式を225銘柄購入することを想像すれば、いかに簡単に分散投資が可能かご理解頂けるのではないでしょうか。
また、インデックスに連動するように運用する、と運用ルールが決まっているため、運用にかかるコストは低めになっているのも特徴です。
そもそも、インデックスって何なんだ?という方は、以下の記事もご覧いただければと思います。
アクティブファンドとは?
次にアクティブファンドですが、こちらは、
特定の指標(インデックス)をベンチマークと定め、それを上回るリターンを実現することを目指すファンドや、独自の運用方針を定めて運用するファンド
ということになります。
主な特徴としては、以下の2点になります。
- インデックスを上回るリターンが得られることがある
- 運用コストは高め
2点目の運用コストについては、インデックスを上回るリターンを目指すために、アナリストなどのリサーチ部隊を抱えながら運用するため、コストが高くなるということです。
そして、1つ目の「インデックスを上回るリターンが得られることがある」という点ですが、上回ることを目指すものの、上回ることを保障するわけでもありませんし、実際、常に上回り続けるわけでもありません。
では、一体、どのくらいのアクティブファンドがインデックスを上回っているのでしょうか?
今回は、SPIVA®日本スコアカードと呼ばれる調査結果で確認していきたいと思います。
SPIVA®日本スコアカード Year-End 2019を確認!
今回ご紹介するレポートは、
というものです。
SPIVAは、S&P Indices Versus Active を表していて、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが発行している、アクティブファンドとインデックス(インデックスファンドではありません)を比較するレポートです。
SPIVA日本スコアカードでは、アクティブに運用されている日本の投資信託についてそれぞれのベンチマーク指数に対するパフォーマンスを1年、3年、5年、10年の投資期間にわたり報告します。このスコアカードでは、741以上の日本の大型株・中型株・小型株の株式ファンドのリターンに加え、グローバル市場、国際市場、新興国市場、及び米国市場に投資する646以上の国際株ファンドのリターンも評価しました。
では、具体的に中身を見てみたいと思います(詳しく知りたい方は、上のリンクから直接レポートをお読みになることをおすすめします)。
1年リターンでアンダーパフォームしたファンドの割合は?
1年間のリターンでインデックス(指数)をアンダーパフォームした、つまり下回ったファンドの割合が、年ごとに示されています。
最新の2019年のデータを見ると、
- 日本の大型株ファンドで57.6%
- 日本の中小型株ファンドで25.4%
- 全ての日本株ファンドで43.7%
- 米国株ファンドで78.8%
- グローバル株式ファンドで56.2%
- 国際株式ファンドで67.7%
- 新興国株式ファンドで56.8%
となっており、日本の中小型株ファンド以外はすべてのカテゴリーで半分以上のアクティブファンドがインデックスを下回っていることがわかるかと思います。
10年リターンでアンダーパフォームしたファンドの割合は?
次に、1年といった短期のリターンではなく、3年、5年、10年ともう少し長期的に見た時のリターンでインデックス(指数)をアンダーパフォームした、つまり下回ったアクティブファンドの割合を確認してみましょう。
一般の個人の方は、基本的に長期投資が前提だと思いますので10年のデータで確認していきますと、
- 日本の大型株ファンドで69.1%
- 日本の中小型株ファンドで54.8%
- 全ての日本株ファンドで66.3%
- 米国株ファンドで87.5%
- グローバル株式ファンドで93.0%
- 国際株式ファンドで94.4%
- 新興国株式ファンドで93.4%
となっており、日本の中小型株ファンドを含めてすべてのカテゴリーで、半分以上のアクティブファンドはインデックスを下回っていることがわかるかと思います。
特に、海外を対象としたファンドについては、いずれも80%台後半から90%台前半といった水準になっており、ほとんどのファンドでインデックスを上回れていない、ということがわかります。
インデックスファンドをおすすめする理由が少しご理解いただけるのではないでしょうか。
10年後に生き残っているファンドの割合は?
また、投資信託での投資をする際には長期の運用を前提にしたいところではありますが、実際にはすべてのファンドが20年、30年と長期で運用されるわけではありません。
次の表は、アクティブファンドが10年後に生き残って運用が継続されている割合(生存率)を示しています。
上から順に見ていきますと、10年後の生存率は次のようになっています。
- 日本の大型株ファンドで64.56%
- 日本の中小型株ファンドで62.65%
- 全ての日本株ファンドで63.93%
- 米国株ファンドで50.0%
- グローバル株式ファンドで56.59%
- 国際株式ファンドで66.67%
- 新興国株式ファンドで49.18%
- 全ての外国株式ファンドで56.34%
インデックスファンドをおすすめする理由がさらにご理解いただけるのではないでしょうか。
インデックスと比べて、ファンドの平均パフォーマンスは?
最後に、実際のファンドのパフォーマンスはどのくらいなのでしょうか?
もちろんアクティブファンドの中には、インデックスと比べて圧倒的にパフォーマンスがいいファンドがあることも事実ですが、アクティブファンド全体の平均パフォーマンスを確認してみたいと思います。
上の表では1段目と2段目、3段目と4段目、といった具合でペアになっていて、奇数段目がインデックスのパフォーマンス、偶数段目が該当アクティブファンドのパフォーマンスという形で表示されています。
以下では、10年の数字を見ていきます。
まず、日本大型株ファンドのリターンが8.49%に対して、その対象インデックスであるS&P/TOPIX 150 指数が8.42%とほぼ互角になっています。
日本の中小型株ファンドのリターンが13.12%に対して、インデックスが10.59%と、インデックスを2.5%ほど上回っていることが確認できます。
一方、米国株式ファンド、グローバル株式ファンド、国際株式ファンド、新興国株式ファンドは、いずれもインデックスのリターンがファンドのリターンを上回っており、米国株式ファンドの場合には5%以上の差になっています。
インデックスファンドをおすすめする理由がかなりご理解いただけたのではないかと思います。
もちろんアクティブファンドの中には、長期にわたってインデックスを上回り続けるファンドもありますが、一般的に5,000~6,000本(※)もあると言われる投資信託の中から、そのようなファンドを見つけ、じっと保有し続け、リターンを実現していくのは至難の技だと思っています。
※モーニングスターのサイトで、何も条件をつけずに検索すると5,846本、「ETF・DC専用・SMA専用を除く全ファンド」という条件を課すと4,757本となりました(2020年10月22日時点)
ということで、
フツーの人がフツーに資産形成していくためなら、アクティブファンドよりインデックスファンドがおすすめ
だと考えています。
たまに
「初心者の方には、インデックスファンドがおすすめです」
といった言い方を目にしますが、個人的には、初心者に限定するものではなく、
初心者だろうと、中級者だろうと、上級者だろうと、フツーに資産形成していくためなら、インデックスファンドがおすすめ
だと思っています。
よろしければ、次の記事もご覧頂けたらと思います。