投資というと、「いくらで買って、いくらで売り抜けるかが大事なんだ!」なんて声も聞こえてきそうです。
しかし、つみたてNISAなどを活用して、長期分散積立投資を行っていく場合、その買値についていちいち気にする必要はないと考えています。
本日はそのワケを考えていきます。
なお、以下の話は、基本的に十分に分散された投資信託などを通じて長期的に積立投資を行った場合の話であり、個別株式を対象とした株式るいとうなどには当てはまりませんので、その点はご留意ください。
利回り5%で運用できたら19年後には
平均利回り5%で運用できたとしたら、19年後にはいくらになるでしょうか。
今、ある投資信託を基準価額10,000で購入したとすると、利回り5%で19年後なら、
$$10,000 \times (1 + 0.05)^{19} = 25,269 $$
と約2.5倍になります。
ここでは、税金や手数料は考慮せず、またリターンはキャピタルゲイン(値上がり益)のみで、インカムゲイン(分配金や配当金による収入)はないものとしておきます。
ここでイメージしているのは、つみたてNISAを活用して、1年目にコツコツ積立投資を行い、その平均購入価格が10,000だった場合、その後19年間運用したら(ほったらかしたら?)どうなるか、ということです。
積立投資の平均購入価格はどのくらいぶれるのか?
上では、平均購入価格が10,000と仮定しましたが、実際に定期的に積立で購入していった場合、購入け価格はどのくらいぶれる可能性があるのでしょうか。
日本株式と先進国株式のインデックスファンドである次の2つの投資信託を例に確認してみます。
ニッセイ TOPIXインデックスF(モーニングスターウェブサイト)
ニッセイ 外国株式インデックスファンド(モーニングスターウェブサイト)
モーニングスターのウェブサイトでは基準価額のデータをダウンロードできるので、そちらを使って確認してみたいと思います。
ニッセイ TOPIXインデックスFの場合
まず日本株式と対象とした投資信託の場合です。
基準価額のデータを確認すると、次のようになっていました。
- 2016年の基準価額
- 平均値:8528円
- 最高値:9842円(平均値に対して115%の水準)
- 最安値:7453円(平均値に対して87%の水準)
- 2017年の基準価額
- 平均値:10410円
- 最高値:11832円(平均値に対して114%の水準)
- 最安値:9345円(平均値に対して90%の水準)
いずれの年も、積立頻度にもよりますが、平均購入価格は最高値と最安値の間になり、平均値近くの水準になることが期待されます。
2016年の例で言えば、最もタイミングが悪い定期積立になったとしても、最高値近くで平均よりも15%程度高くなり、逆に最もタイミングのよい定期積立になった場合、最安値近くで平均よりも13%程度低く購入できたことになります。
2017年の場合は、最高値と最安値の幅はさらに小さくなっていますね。
ニッセイ 外国株式インデックスファンドの場合
次に外国株式の場合です。基準価額のデータを確認すると、次のようになっていました。
- 2016年の基準価額
- 平均値:11388円
- 最高値:13190円(平均値に対して116%の水準)
- 最安値:10078円(平均値に対して88%の水準)
- 2017年の基準価額
- 平均値:13902円
- 最高値:15429円(平均値に対して111%の水準)
- 最安値:12705円(平均値に対して91%の水準)
こちらの場合も、平均値からの乖離は9%~16%程度におさまっています。
外国株式の方が、株式のリスクに加えて為替リスクもある分、ブレ幅が大きいという印象をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、この期間に限って言えば、それほど違いはないですね。
運悪く、平均よりも2割高い購入価格になってしまったら?
では、なぜか運悪く、平均よりも2割ほど高い購入価格になってしまったとしたら、19年間のリターン(運用利回り)はどの程度変わるのでしょうか。
最初の例では、
$$10,000 \times (1 + 0.05)^{19} = 25,269 $$
となっていましたが、購入価格が2割高くなってしまったら、19年後の基準価額25,269円は同じですから
$$12,000 \times (1 + r)^{19} = 25,269 $$
となりますね。
この等式を成り立たせるためには、運用利回りは5%ではなくなってしまうわけですが、この r を求めてみると、
3.9971,,,%
となり、ほぼ4%となります。
2割、つまり20%ほど高く購入したということで、それを19年間運用するわけですから、単純に考えると、
20% / 19 = 1.05%
くらい利回りを押し下げることになります(0.05%ほど上の計算と差があるのは複利によるものです)。
つまり、2割とか購入価格が高めになってしまったとしても、20年近く運用すれば利回りへの影響は1%程度ですし、さらに30年、40年と運用期間が長くなればなるほど、その影響はますます下がっていきます。
常に2割も割高で買い続けることはない
そして、マーケットの変動を見ながらタイミングを見計らって購入し、よっぽど下手くそでない限り、常に平均よりも2割も高い価格で購入し続けるということはありません(それはそれである意味才能かもしれませんが、、、)。
定期的な積立設定をしてしまえば、高いときもあれば、安いときもありますが、平均購入価格は、だいたい平均的なものになります。
たまたまある年は少し高めになってしまうこともあるかもしれませんが、次の年は安くなるかもしれません。
こういったブレをどうしても抑えたいということでしたら、積立頻度を毎日積立にしておけば、確実に平均以下で購入できます(定額積立であれば、ドルコスト平均法により、平均よりも下回ってくるはずです)。
ただし、積立頻度による違いはほとんどないというデータもあります。
最後に
ということで、積立を始めたばかりの方は、いくらで買えたんだろう?とかかなり気になる方も多いかと思いますが、慣れてくると、鈍感力が高まっていき、気にならなくなります。
そして、少しでも早く気にならなくなれるよう、その論理的な裏付けをご説明してみました。
そもそも株式などへの投資の利回りは確定利回りではありません。平均的には5%程度が期待できると言っても、いいときもあれば悪いときもあります。
リーマンショックのような暴落があるときもあります。
ある特定の期間だけで見た場合、その利回りは-5%になるかもしれないし、+7%程度になっているかもしれません。
しかし、期間が長くなればなるほど、実現される平均リターン(運用利回り)は安定していくと考えておいてよいと思います。そして、投資対象が株式の場合(もちろん投資信託を経由)、その期待リターン(運用利回り)は5%程度と思っておいて、大間違いはないと考えています。
よろしければこちらの記事もご覧頂ければと思います。