昨日は、日本債券インデックスファンドのベンチマークとして最もよく利用されている日本債券のインデックスである、NOMURA-BPI総合についてご説明しました。
日経平均株価(日経225)やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスとは?(5)NOMURA-BPI総合(NOMURA-ボンド・パフォーマンス・インデックス総合)
現在販売されている日本債券インデックスファンドを購入すると、ほとんどの場合、NOMURA-BPI総合に連動する投資成果が得られることになります。
では、現在の市場環境に置いて、日本債券インデックスファンドは買うべきなのでしょうか、買わないべきなのでしょうか。
投資家が得られるリターンは、投資対象資産のリターンからコストを控除したもの
投資信託の仕組みでご説明していますが、投資信託は少額から投資することができる代わりに、購入や保有している間にはコスト(費用)がかかります。
https://shisankeisei.jp/investment-for-building-wealth/basics-investment-trust/
保有している間にかかる費用としては、
- 運用管理費用(信託報酬)
- 監査報酬
- 売買委託手数料
といったものがありますが、コストの中でも比較的大きなものとして信託報酬があります。
投資家が実際に得られるリターンは、次のような形で計算されますので、
投資家が得られるリターン(利回り)
= 投資対象資産(株式や債券など)のリターン(利回り) ー コスト(運用管理費用(信託報酬)、監査報酬、売買委託手数料)
投資対象が同じ場合は、コストの部分が小さければ小さいほど、投資家が実際に手にするリターン(利回り)は高くなるわけです。
NOMURA-BPI総合の2018年6月末時点におけるリターン(利回り)は、0.12%程度でしたね。
では、日本債券インデックスファンドのコストの一部、信託報酬はどのくらいの水準なのでしょうか。
日本債券インデックスファンドの信託報酬
投資信託等の金融情報を提供しているモーニングスターのサイトで、日本債券インデックスファンドという条件で絞り込み、信託報酬等の欄の数字が小さい順に並べてみると、次のようになりました。
まずこれらのファンドの投資対象(ベンチマーク)を確認したところ、上から7つ目の三井住友・DC年金バランスゼロというバランスファンド(外国債券を含む)を除くと、すべてNOMURA-BPI総合をベンチーマークとするシンプルな日本債券インデックスファンドとなっていました。
そして、気になる信託報酬等のところですが、赤い四角で囲っていますが、最も低いもので0.15%となっているものが5つ、その次が0.17%、0.24%と続き、それ以降はどんどん上がっていきます。
気になる投資家が得られるリターンは?
NOMURA-BPI総合の期待リターン、日本債券インデックスファンドの信託報酬等の数字が確認できましたので、投資家が得られるリターン(利回り)を式にあてはめて計算してみたいと思います。
日本債券インデックスファンドの場合
投資家が得られるリターン(利回り)
= 投資対象資産(株式や債券など)のリターン(利回り) ー コスト(運用管理費用(信託報酬)、監査報酬、売買委託手数料)
= 0.12% ー 0.15%
= -0.03%
簡単な引き算です(ここでは簡単のため、信託報酬のみを差し引いていますが、実際には監査報酬等も含めて考えるべきです)。
結果は、-0.03%(マイナス0.03%)という結果になりました。
これは信託報酬が最も低い0.15%の場合の結果ですから、モーニングスターの検索結果にあるように、信託報酬が0.24%、0.32%、0.40%などと高いファンドを購入した場合、投資家が手にできるリターン(利回り)はもっと下がることになります。
期待リターンがマイナスである投資商品を購入するべきでしょうか、購入すべきでないでしょうか。
結論はもちろん、購入すべきではありませんよね。
この結論は、「現在のゼロ金利、マイナス金利と言われる市場環境では」という条件付きですので、市場環境が変わってくれば、購入しても良い時期は来ます。
NOMURA-BPI総合の期待リターンが、信託報酬の水準を大きく超えてきたら、例えば0.40~0.50%くらいの水準になってきたら、日本債券インデックスファンドへの投資を考えてもよいのではないでしょうか。
それまでは元本確保で0.20%程度の金利がつくネット銀行の定期預金などを利用しておくべきだと思います。
株式インデックスファンドの場合は?
ちなみに、株式のインデックスファンドの場合はどうなるでしょうか。
一般的に、日本株式や世界株式など、株式のリターンは、4~5%程度と見ておいて大間違いはないと考えています。
仮に株式のリターンを4%、信託報酬を0.15%とすると、
株式インデックスファンドの場合
投資家が得られるリターン(利回り)
= 投資対象資産(株式や債券など)のリターン(利回り) ー コスト(運用管理費用(信託報酬)、監査報酬、売買委託手数料)
= 4% ー 0.15%
= 3.85%
のようになり、投資家が手にするリターン(利回り)は、3.85%となりました。
これなら、投資する価値はありそうですね(株式インデックスファンドは確定利回りではなく、あくまで平均的に期待されるリターンがこの程度になる、ということにご留意ください)。
最後に
ということで、日本債券インデックスファンドは現在の市場環境では投資すべきではない、と考えています。
投資信託の投資対象資産としては株式、債券、不動産(REIT)など、様々なものが含まれていることがありますが、その中身をきちんと確認し、投資信託としての保有するコストを上回るリターン(利回り)が期待できるかどうか、自分の頭で考え、確認するようにしていきましょう。
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