資産形成ハンドブックでは、将来に向けて長期的にお金を運用していくなら、世界の幅広い株式に分散して投資できる投資信託を利用するのが便利だと考えています。
特に資産形成世代の方は、日々の収入からその一部を定期的に積み立てていく、積立投資というスタイルで行うのがオススメです。
そして、積立投資の場合、2018年から始まったつみたてNISAと呼ばれる税制優遇制度を利用すると、年間40万円までの投資額に対して20年間は非課税となります。
そのつみたてNISAで投資できるインデックスファンドで、全世界に幅広く投資できるインデックスには、
の2つがあります。
それぞれのインデックスは、すでに以下の記事でご説明致しました。
日経平均株価(日経225)やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスとは?(6)MSCI ACWI(MSCI アクイ/オールカントリー)
日経平均株価(日経225)やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスとは?(7)FTSE Global All Cap Index(FTSE グローバル・オール・キャップ・インデックス)
今回は、この2つのインデックスを比較してみたいと思います。
(ちなみに、MSCI ACWIと比較すべきFTSEのインデックスは、FTSE All-World(時価総額90-95%をカバー)のような気もしますが、ここではつみたてNISAで実際に投資可能なインデックスの比較ということで、FTSE Global All Cap Indexと比較しています)
インデックスの比較
まずインデックスの基本的な情報を以下の比較表で確認してみます(以下、MSCI ACWIはMSCI、FTSE Global All Cap IndexはFTSEと略記します)。
2018/9末 | MSCI | FTSE |
---|---|---|
構成国 | 47ヶ国 | 48ヶ国 |
構成銘柄数 | 2791 | 7900 |
時価総額カバー率 | 約85% | 約98% |
リターン(1年、年率) | 9.77% | 10.20% |
リターン(3年、年率) | 13.40% | 14.00% |
リターン(5年、年率) | 8.67% | 9.20% |
構成国は、MSCIが47ヶ国、FTSEが48ヶ国とほぼ同水準です。
しかし、構成銘柄数は、MSCIが2791銘柄であるのに対して、FTSEは7900銘柄と3倍近い水準になっています。
ただし、時価総額カバー率で言うと、MSCIは85%に対してFTSEが98%と、銘柄数ほどの開きはありません(厳密には、それぞれ対象時価総額の定義なども異なると思いますので、あくまで大まかなイメージとお考えください)。
そして、投資する場合に気になるリターンですが、1年、3年、5年ともに、FTSEの方が0.5%程度高くなっているようです。
これはあくまで過去の結果ですから、今後のリターンについてもFTSEが高いと言えるわけではありません。
あくまでご参考です。
上位10社の顔ぶれは?
それぞれの構成銘柄で割合の高い方から10社を確認すると以下のようになっています。
MSCI | FTSE | |
---|---|---|
上位10銘柄のウェイト | 11.31% | 9.85% |
1 | APPLE | Apple Inc. |
2 | MICROSOFT CORP | Microsoft Corp |
3 | AMAZON.COM | Amazon.Com |
4 | FACEBOOK A | Facebook Class A |
5 | JPMORGAN CHASE & CO | JPMorgan Chase & Co |
6 | ALPHABET C | Johnson & Johnson |
7 | JOHNSON & JOHNSON | Alphabet Class C |
8 | ALPHABET A | Alphabet Class A |
9 | EXXON MOBIL CORP | Exxon Mobil Corporation |
10 | BANK OF AMERICA CORP | Berkshire Hathaway B |
まず上位10社の合計は、MSCIが11.31%、FTSEが9.85%と1.5%ほど差があります。MSCIの3000銘柄弱に対して、FTSEは約8000銘柄ですから、このくらいの差が生まれるのは当然かもしれません。
具体的な銘柄ですが、上位5社は順位も含めてまったく同じです。6位以降で少し順位の違いや銘柄の違いが見られますが、MSCI、FTSEの各社の計算ロジックの相違によるものだと思われます。
この部分は、もちろんフツーの個人投資家が気にする必要はない点でしょう。
過去10年のリターンの推移
過去10年、リーマンショックの2008年から2017年までの年次リターンを確認すると、次のグラフのようになっています。
両者とも、全世界の株式に幅広く投資するというコンセプトは同じですから、同じようなリターンになっていますね。
どちらのインデックスの投資信託を選ぶべき?
ここまで2つのインデックスを比較してきましたが、これらのインデックスをベンチマークとするインデックスファンド(投資信託)を選ぶ際には、どのように考えたらよいのでしょうか。
MSCIの約3000銘柄弱で85%ほどの時価総額をカバーしているものか、
FTSEの約8000銘柄で98%ほどの時価総額をカバーしているものか、
という選択です。
まずインデックスそのもののリターンとしてどちらがいいのか?というのがあります。
過去5年のリターンでは、FTSEの方がよかったようですが、今後もFTSEの方がベターであり続ける保証はどこにもありません。
小型株効果が発揮されるマーケット環境であればFTSEの方がパフォーマンスがよくなるかもしれませんが、一方で、大型株が牽引するマーケット環境であればMSCIの方がよくなるでしょう。
そして、それぞれのインデックスに連動するインデックスファンドがどの運用会社で設定されているかです。
運用会社の運用の巧拙によって、どれほどきちんとインデックスに連動するか(トラッキングエラーと呼ばれています)が異なってきます。
MSCIの方もさることながら、8000銘柄といった規模のインデックスに連動するように運用するのは相応の負担が発生していることでしょう。
そして、うまくベンチマークとなるインデックスに連動する運用ができたとして、その運用にかかる、投資家が負担するコスト・税金はどのくらいか、ということになります。
つまり、運用会社によるトラッキングエラーが無視できる場合、
投資家のリターン = インデックスのリターン ー 投資信託の運用コスト(各種手数料・税金)
ということです。
あくまで過去のデータですが、上で確認した通り、直近の過去5年ではFTSEの方が0.53%ほど年率リターンは高かったようです。
FTSE連動のインデックスファンドを選んだ場合、その運用コストがMSCI連動ファンドのコストよりも0.53%以上高くならなければ、FTSEの方が投資家にとってはよいパフォーマンスになるということになります(あくまで過去のデータの場合です)。
リターンはもちろん、コストも事前にすべてわかるわけではありませんので、悩ましい選択ですね。
結論
ただ、ここまで書いておいてなんですが、どちらを選んだとして、資産形成の大勢に影響はないと思います。
何となく好きな方を選んでおく、でよいと思います。
ちなみに、つみたてNISA対象商品でこれらのインデックスに連動するインデックスファンドには以下のような商品があります。
- MSCI ACWI連動
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(運用管理費用 年率0.15336%(税込))
- FTSE Global All Cap Index連動
楽天・全世界株式インデックス・ファンド(運用管理費用 年率0.2396%程度(税込))
今後、これらのインデックスに連動するファンドが各社から設定され、コストだけでなく、トラッキングエラーも含めて比較できるように商品がさらに充実してくるとよいですね。