本日も株式取引が投資なのか、投機なのか、について考えてみたいと思います。
前回まではこちら↓です。
本日はまず、価値と価格の動きについて、投資と投機のそれぞれで考えてみたいと思います。
価値と価格について:投資の場合
投資は、資金を投下した事業・不動産・証券(その証券を発行している企業)が、ゼロから何らかの価値を生み出し、その価値を投資のリターンとして得る行為です。
ただ、とは言っても投資ですから、価値を生み出すことに成功する場合もあれば、失敗してしまうこともあります。
それはまさにリスクがあるということになります。
そんなリスクがあったとしても、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ではないですが、すべての投資先がそれぞれすべて成功するのは難しかったとしても、すべての投資対象を見ると、平均的には世の中に価値を生み出し、その価値をリターンとして得ることができるはずです(でなければ、これほど株式会社が存続し続けていないはずです)。
つまり、投資対象である資産の、資産価値は時間の経過とともに右肩上がりで上がっていくはずです。
常に順風満帆、一直線に上がっていくとは言えないかもしれませんが、平均的には上がっていくはずです(下のグラフの緑色の線です)。
一方、資産価格はその資産に対する需要(買いたい人)と供給(売りたい人)によって、日々変動していくわけですが、例えば10年前と比べて、その資産が価値を生み続けているのであれば、その資産価値は上昇しているはずであり、その結果、資産価格も上昇しているはずです。
もちろん、リーマンショックなどの金融危機などが起これば一時的に資産価格が暴落している可能性はあるのですが、それは市場参加者の心理的な状況にもよるので、危機が去って、通常状態に戻る過程において、資産価格は適正な水準に戻ってくるはずです。
このように、投資対象資産の場合、資産価値と資産価格は、一時的に乖離することはあっても長期的には比例して上昇していくことになります。
このように価値を生み続ける資産としては、株式や不動産が代表的なものになります。
ただし、株式や不動産がいくら価値を生み出すとは言え、上のグラフの横軸の範囲を、1日とか1週間とか非常に短い時間で考えてしまうと、資産価値の線もほぼ真横になってしまい、短期的な価格変動の大きさが、資産価値の変化幅を上回ってしまうでしょう。
一方、横軸の範囲を10年、20年とある程度長い期間にすれば、資産価値の上昇幅に対して、需要と供給からくる価格の変動幅は、あまり気にならないくらいの大きさになるはずです。
価値と価格について:投機の場合
さて、投機の場合はどのようになるでしょうか。
投機の場合、対象資産が何ら価値を生み出すことはなくても、その資産価格が変動さえしていれば、現在と将来の価格差から収益を上げることは可能です。
以下のグラフでは、資産価値ははほぼ横ばいになっていますが、資産価格は大きく変動しています。この変動も、需要(買いたい人)と供給(売りたい人)によって、発生しているわけです。
このように、資産それ自体が価値を生み出さないものとしては、金(ゴールド)やプラチナなどの貴金属、原油、仮想通貨(仮想資産)などが挙げられると思います。
「いやいや、金(ゴールド)は価値があるじゃないか」
と思われる方もいらっしゃるかと思います。もちろん何らかの価値はあると思われますが、それ自身が何らかの付加価値を生み続けていくわけではありません。
1kgの金の塊を目の前に置いて、1週間、1ヵ月、1年、10年、、、と眺めていても、何の変化もないはずです。
(1kgが1ヵ月後に1.01kgに、12ヵ月後に1.12kgにと増えていくことはありません、、、これは物理法則です)
一方、株式や不動産といった資産は、株式であればそれを発行している企業がビジネス(事業)を行い、売上を上げて、利益を出していきますし、不動産は入居者さんから賃料収入を得ることができます。
つまり、株式や不動産はキャッシュフローを生み続ける資産なのです。
株式取引は投資なのか?投機なのか?
もともと、「株式取引は投資なのか?投機なのか?」ということで、考えてきましたが、株式を購入して、売却するまでの期間が10年、20年と長ければ投資としての付き合い方になると思いますし、1時間、1日、1週間などの短い時間であれば投機としての付き合い方になると考えています。
これが、このシリーズの冒頭で申し上げた「株式とどのように付き合うかで、投資にも、投機にもなる」という意味です。
資産形成としての投資、エンターテイメント・娯楽としての投機
このように、「株式取引は投資なのか?投機なのか?」と言われても、その付き合い方次第で投資にも投機にもなると考えています。
投機と認識した上で株式とお付き合いすることは、エンターテイメント・娯楽として考えれば、それはそれで楽しいものだと思います。
一方、資産形成の中に、投資としての株式とのお付き合いを組み入れることは選択肢の1つになると思います(預貯金、保険商品などと並んで、選択肢の1つ)。
株式(もしくはそれを対象とした投資信託/ETF)とお付き合いする場合、投資としてお付き合いするのか、投機としてお付き合いするのか、それをきっちりと認識しておくことが大切なのではないでしょうか。